アムの本棚に、『うつくしいってなに?』という絵本があります。作は詩人の最果タヒさん、絵は絵本作家の荒井良二さん。以前、#みんなのしおり のコーナーでも一度ご紹介した一冊です。
そのときは短い紹介文だけだったので、今日はもう少しだけ、この本のことを書いてみます。
32ページ、A4判。あらすじは短い
2024年7月、小学館から出た絵本です。A4判で32ページ。版元の紹介文には、こんなふうに書かれています。
女の子が部屋から窓の外を眺めています。(中略)やがて女の子は自分の世界に包まれて、眠ります。
夕暮れ、海、船、夜空、星、都会の明かり、部屋の中の家具やおもちゃ、ネコ。窓の外と部屋の中にあるものが並んでいって、女の子は眠る。あらすじとしては、これでほぼ全部です。事件は起きませんし、教訓もありません。
それでも、読み終わるまでにかかる時間は、32ページという数字から想像するよりも長くなります。文字が少ないぶん、絵のほうを見ている時間が増えるからだと思います。
書いたのは、詩人の最果タヒ
最果タヒさんは1986年生まれの詩人です。第一詩集『グッドモーニング』で中原中也賞を受賞し、詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』は2017年に映画化されています。詩集のほかに、小説やエッセイ集も出している方です。
詩を書く人が絵本の文を書くと、説明が減ります。この本にも「うつくしいとは、こういうものです」という答えは出てきません。タイトルが問いのかたちのまま、最後まで問いのかたちで残ります。
答えの書いていない本
読み終わっても、うつくしいものが何だったのかは分かりません。分からないまま、なんとなく気分だけが残ります。誰かと一緒に読んだら、たぶん人によって残るものが違うのだろうと思います。
絵は、荒井良二
絵を担当した荒井良二さんは、2005年にアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞しています。スウェーデン政府が2002年に創設した、子どもの本の作家・画家・読書推進活動などを対象とする賞で、日本人の受賞はこのときが初めてでした。同じ年には、イギリスの作家フィリップ・プルマンも受賞しています。
この本を手に取ったときも、まず目に入ったのは女の子のキラキラした瞳でした。カラフルなのに強すぎない絵で、余韻を残す詩とちょうど釣り合っている感じがします。カバーをはずしたときの色合いと紙の風合いもよくて、その一手間まで楽しい一冊です。
しおりに残っていた言葉
アムでは、読んだ人が感想を書いたしおりを本にはさんでいく「#みんなのしおり」という取り組みをしています。この本にはさまっていたのは、こんな言葉でした。
ちょうどサンセットビーチヨガをしたばかりで、同じような色の空と海をみた。うつくしい、大地を感じる、風を感じる、と思った。それがそのまま詩と絵に現れていて、小さな女の子に戻ることができた。絵も荒井良二さんの絵本で一番好きかも!!
本の紹介文としてはずいぶん個人的な内容ですが、しおりはそれでいいことになっています。書評ではなく、その人がその日どこで何を見ていたかの記録だからです。「うつくしいってなに?」という問いに、この人はビーチで見た空の色で答えている、とも読めます。
大人が絵本を読む時間
絵本は子どものものだと思われがちですが、アムでは2024年12月に「大人の絵本の読み語り会“ガーベラ”」という会を開いたことがあります。読み手のにしむーさんが大人向けにセレクトした絵本を読み、1分ほど余韻に浸ってから、感じたことを話す。そういう進め方の会でした。
この会をやってみて思ったのですが、絵本は「短いから気楽に読める本」ではなく、「短いのに時間がかかる本」です。1冊読み終わったあとに、すぐ次へ行けない。だから複数人で読むと、黙っている時間がけっこう生まれます。
『うつくしいってなに?』も、そういう一冊です。アムに来られたときは、飲みものを片手に、席で開いてみてください。32ページなので、そんなに時間はかかりません——と書きたいところですが、たぶんかかります。
絵をじっくり見る時間をもう少し長くとりたい方は、金沢のアートスポットをまとめたページもどうぞ。本について誰かと話してみたい方には、読書会について書いた記事もあります。
参考にした資料
- うつくしいってなに?|書籍|小学館
- うつくしいってなに?|七月堂古書部(版元の紹介文、判型・ページ数・発行日)
- 最果タヒ|著者プロフィール|新潮社
- アストリッド・リンドグレーン記念文学賞|JBBY(賞の概要と2005年の受賞者)
- 12/21 大人の絵本の読み語り会💐 開催(アムでの開催記録)
