1. ひがし茶屋街の歩き方
  2. 観光
  3. 尾張町から主計町へ|藩政期の商人町に残る4つの建物と、火曜に行くと困る話

観光 / 公開: 2026年9月2日

尾張町から主計町へ|藩政期の商人町に残る4つの建物と、火曜に行くと困る話

主計町茶屋街のすぐ南、浅野川大橋を渡った先に続く一帯が尾張町(おわりちょう)です。茶屋街から歩いて数分の距離ですが、成り立ちがまったく違います。こちらは花街ではなく、藩政期の商人町でした。

そして今、その通り沿いには銀行だった建物・薬種商の町家・蓄音器の博物館が並んでいます。入館料は無料か100円台。茶屋街の帰りに寄る場所として、これほど費用対効果の高いエリアもそう多くありません。

結論:合計410円で4つの建物に入れる。ただし火曜は避ける

尾張町とは:利家が尾張から呼び寄せた商人の町

町名の由来ははっきりしています。尾張町商店街の説明によれば、前田利家の生誕地である尾張荒子(現在の名古屋市中川区)から呼び寄せた御用商人が住んだ土地であることが、そのまま町名になりました。

藩政期の尾張町は、米仲買商を中心に71軒の店舗が並ぶ金沢経済の中心地だったと記録されています。ひがし茶屋街が1820年に開かれた遊興の街、主計町が明治にできた茶屋町なのに対し、尾張町はそれよりずっと前から商いの街として動いていた、ということです。

今の通りを歩くと、その名残が建物の格で残っています。明治から昭和初期にかけて建てられた銀行建築が2棟、通りに面して建っている街というのは、金沢でもここだけです。

尾張町の4つの建物 — 料金と休館日の一覧

施設入館料開館時間休館日
金沢文芸館一般100円(高校生以下無料)10:00〜18:00(入館17:30まで)火曜・年末年始
尾張町町民文化館無料10:00〜16:00平日・年末年始
尾張町老舗交流館無料9:30〜17:00火曜・年末年始
金沢蓄音器館一般310円(高校生以下無料)10:00〜17:30(入館17:00まで)火曜・年末年始・展示替期間

いちばん注意が要るのは尾張町町民文化館です。ほかの3館とは休みの入り方が逆で、開いているのは土日祝だけ。平日に尾張町を歩いても、ここだけは外から眺めることになります。

逆に火曜日は、文芸館・老舗交流館・蓄音器館の3館に加えて、川の向こうの**泉鏡花記念館(一般310円・火曜休)**まで閉まります。火曜に主計町と尾張町を回る予定なら、建物に入る計画は最初から立てないほうが失望が少ないです。街歩き自体は無料でいつでもできます。

それぞれの建物

金沢文芸館 — 昭和4年の銀行に、五木寛之の文庫がある

浅野川大橋のたもとに建つ、角の丸いレトロな3階建て。1929(昭和4)年に高岡銀行(のちの北陸銀行)橋場支店として竣工した建物です。1952(昭和27)年からは加州相互銀行(のちの石川銀行)の支店として使われ、1993(平成5)年に金沢市指定保存建造物、2004(平成16)年に国登録有形文化財となりました。2005(平成17)年から金沢文芸館として公開されています。

中身は文学館です。金沢市観光協会の案内によると、1階の交流サロンでは泉鏡花文学賞と市民文学賞の受賞作品が閲覧でき、2階には「金沢五木寛之文庫」が常設されています。

五木寛之という名前は、この街を歩いていると何度も出てきます。主計町のあかり坂を名づけたのが五木寛之で、その坂は文芸館から歩いて数分の場所です。坂の名前の由来を知ってから文庫を見ると、順番として腑に落ちます。あかり坂そのものは主計町茶屋街のページにまとめました。

尾張町町民文化館 — 外は土蔵、中は洋館

こちらは1907(明治40)年末に金沢貯蓄銀行として建てられた建物。のちに北陸銀行の支店となり、1976(昭和51)年に県へ寄贈されました。同年9月21日に石川県指定文化財となっています。

見どころは、外観と内装のちぐはぐさです。石川県の文化財解説は、この建物を**「外観が和風で、内部意匠が洋風という、特異な建物」**と説明しています。外壁は黒漆喰の塗籠土蔵造り、屋根は城郭風の入母屋。ところが扉を開けると、白漆喰に西洋古典建築のモチーフを木彫で再現した空間が広がり、中央には大きなアーチが架かっています。

明治40年の地方銀行が、外向きには城下町の顔をして、内向きには西洋の顔をしていた。そのねじれがそのまま残っている建物です。入館無料で、この内部を見られます。

尾張町老舗交流館 — 薬種商の町家がそのまま残る

明治期に建てられた薬種商の町家を活用した施設です。梁・土蔵・土間といった町家の構造がそのまま見られ、館内には金沢の老舗の歴史や商いの道具が展示されています。観光案内所も兼ねているので、この先どこへ行くか決めかねているときに立ち寄る場所としても使えます。

商人町だった尾張町の性格が、いちばん素直に残っているのはこの建物です。入館無料。

金沢蓄音器館 — 1日3回、実際に音が鳴る

尾張町2丁目にある、SPレコードと蓄音器の博物館。ここだけは性格が違って、展示を見るのではなく音を聴きに行く施設です。

毎日11:00・14:00・16:00の3回、学芸員の解説つきで蓄音器の聴き比べ実演が行われます。エジソン社製の蝋管式蓄音器から時代を下って、機種ごとに同じSP盤がどう鳴るかを聴かせるという内容です。所要は約30分。日曜日には、紙ロールでピアニストの指使いを再現する1927年米国製の自動再演ピアノの公開(10:30・13:30・15:30)もあります。

この館は実演の時刻に合わせて行く価値がある、数少ないタイプの施設です。ひがし茶屋街を午前に歩いて、14時の回に合わせて尾張町へ下りてくる、という組み立てが素直に成立します。

尾張町から主計町への下り方

尾張町の通りは、茶屋街より一段高いところを走っています。そこから茶屋街へ下りる道が、暗がり坂です。

  1. 尾張町の表通りから、久保市乙剣宮の境内に入る
  2. 境内を抜けると、そのまま暗がり坂の石段になる
  3. 石段を下りきったところが主計町茶屋街の川端

金沢市観光協会は暗がり坂を、昼間でも薄暗い光と影の小路として紹介しています。実際、商店街の明るい通りから神社の境内を通り、いきなり花街の裏道に落ちる、という落差の付き方が芝居がかっている道です。尾張町側から入ると、この落差を順番どおりに体験できます。

久保市乙剣宮は金沢における市場発祥の地とされ、境内には泉鏡花の句碑が立ちます。鏡花の生家がすぐ近くだったためで、坂を下りた先の主計町、そして泉鏡花記念館へと話がつながっていきます。このあたりの文学の系譜は浅野川沿いの文学スポットを歩く記事に詳しく書きました。

坂を下りきれば、そこはもう茶屋街です。主計町からひがし茶屋街までは、浅野川大橋を渡って徒歩5分ほど。尾張町 → 暗がり坂 → 主計町 → 浅野川大橋 → ひがし茶屋街という順路なら、商人町・花街・花街と性格の違う3つの街を、坂と橋でつないで歩けます。

よくある質問

尾張町だけでどれくらいかかりますか?

建物に入らず通りを歩くだけなら20分ほど。蓄音器館の実演(約30分)を入れると、4館まわって2時間前後が目安です。文芸館・老舗交流館は展示が小ぶりなので、それぞれ20〜30分あれば見られます。

主計町・ひがし茶屋街とセットで回れますか?

回れます。バス停が同じ「橋場町」なので、降りる場所も帰る場所も変わりません。ひがし茶屋街への行き方はアクセスの記事、主計町の歩き方は主計町茶屋街のページにまとめています。

雨の日でも大丈夫ですか?

尾張町は屋内施設が固まっているぶん、茶屋街より雨に強いエリアです。ただし暗がり坂は石段なので、濡れているときは足元に注意してください。

何時ごろ行くのがいいですか?

蓄音器館の実演時刻(11:00・14:00・16:00)を軸に組むのがおすすめです。文芸館が18:00まで開いているので、夕方にずれ込んでも受け止められます。町民文化館だけは16:00で閉まり、しかも土日祝限定なので、そこを見たい場合は土日の午前から午後前半に尾張町を組み込んでください。

三つの茶屋街との関係は?

尾張町は茶屋街ではありません。ただし主計町と地続きで、街の成り立ちを理解するうえでは対になる場所です。三つの茶屋街そのものの違いは三茶屋街の記事にまとめています。


※料金・開館時間・休館日・文化財の指定内容は 2026年9月2日時点で、以下の情報をもとに確認したものです。開館状況は変わることがあるため、訪問前に各施設の最新情報をご確認ください。

街全体の歩き方はひがし茶屋街の完全ガイド、主計町側は主計町茶屋街のページへ。

ひがし茶屋街の歩き方 トップへ 街の成り立ち、四季の表情、一日のモデルコースをまとめています